しかし傷はそれほどのものでなく、30分ぐらい続く交尾の間も、雌鮫は休むことなく泳ぎ続けることができるくらいだという。
妊娠期間は約二カ月と長く、子鮫は普通、春か初夏に、毎年あるいは1年おきに生まれる。
体が比較的大きく、普通、鮫として知られている種類のものでは20〜28匹の子が体長2フィート(約60センチ)、体重5ポンド(約2.3キロ)ぐらいで生まれ、形は前述したように、完全に成魚と同じである。
これだけの大きさになってから生まれるので、鮫の子は他の冷血動物に比べ生き残る率がずっと高い。
たとえば、多くの魚の子はもっと多数が生まれるが、生き残る率ははるかに低い。
一例として鯖をみれば、僻化後26日で体長1.5インチ(約12.8センチ)、40日で2インチ(約5センチ)となるが、これも何百万という卵のなかのわずかな生き残りなのだ。
鮫の子ははじめから大きく生まれるので、食われることは少なく生き残る率はずっと高くなる。
もっといえば、鮫の子も成魚も、その生き残る率は、実は病気に対する抵抗力しだいなのである。
そうかといって、鮫は病気に弱いわけではない。
むしろ、鮫は強力で効率的な免疫機能の持ち主である。
傷の治りも早く、感染症にかかることもほとんどない。
血液中の抗体が細菌やウイルスに効果的に対応するし、多くの哨乳類なら命を落とすような化学物質からも鮫を守っている。
S大の細菌および免疫研究室のM・S主任教授は、鮫の免疫機能についての研究のパイオニアである。
人間にも免疫グロブリンとして知られる抗体はあるが、その免疫機能は通常、休眠していて、抗原に対抗するときにだけ働く。
1960年代にm大にいたとき、S教授は、鮫の免疫グロブリンはいつも血液中を循環して攻撃準備を整えているという特異性を発見した。
しかし、鮫の強力な免疫機能は、細菌、ウイルス、化学物質以外のものに対しても有効な抗体をつくっているように思われる。
発ガン物質を入れたプールのなかで鮫を飼ってもガンにならないのも、そういう抗体がガンへの抵抗力を持つためと思われる。
1980年代初めに私の興味をひきつけ、なぜ、またどのように鮫はガンに対抗できているのかという一連の疑問が生じたのは、まさにこの事実であった。
また、私がもっとも知りたいと思ったのは、それをどのようにして人間のガンの治療や予防に使えばいいかということであった。
鮫は人間のためにどのように役立ってくれるのか?これまで長い間にわたり、鮫は人間の役に立ってきたのだということが最近の調査でわかってきた。
鮫が地球上に出現して以来4億年、人間は50万年にすぎない。
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